面木 健さん

Takeshi Omoki

7月の第4火曜日、C.school 第8回が開催されました。
今回の出演者は、上通りのオモケンパークで話題となっている面木健さんと、世界を旅する建築資材屋さんの堀部朝広さんでした。

今回は、面木さんの講演をレポートします!

熊本地震でオモキビルがこわれて・・・

2019年6月、熊本県熊本市の中心地・上通りと呼ばれる街の中に「オモケンパーク」という場所がオープンしました。メディアなどでも多数取り上げられ、熊本で今大きな話題になっています。

 

オモケンパークができた場所にはかつて、「オモキビル」というテナントビルがありました。このビルは、今回の出演者である面木さんが、お祖父様の代から引き継がれたもの。大正から昭和初期にかけての「面木漆工場」、戦後の「おしゃれ靴の専門店オモキ屋」、そしてテナントビル「OMOKIビル」として、長きに亘り上通りを見守ってきた建物です。

 

しかし2016年、熊本地震が発生。築100年となるオモキビルは大きなダメージを受け、止むを得ず解体することに。更地となった土地は、建物があった時以上に固定資産税がかかります。何かを建てるにしても、新たにテナントビルを立て直すには2億円近い借金が必要。そして面木さんがこの時に考えたのが「果たして、この人口減少の時代に、新たなビルが必要だろうか?」ということでした。

フェーズが変われば価値観も変わる

日本の人口は、歴史上初めての下り坂を迎えています。人口が多い時代は、物を作れば作るだけ売れる時代でした。しかしこれからは、物を減らしていく時代です。「減る」というのは一見ネガティブだけれど、人が減る分空間は増える。それは豊かなことだと、面木さんはおっしゃいます。

 

オモキビルが無くなった、ゼロベースの空間。そこには井戸が残されていました。新たに建物を建てるよりも、この井戸を中心に人々が憩い、多様性、寛容性、精神的豊かさを感じられる場所にする。熊本の魅力を伝える、この街に来て良かったと思える新しい広場を作る。このような想いから、オモケンパーク プロジェクトが生まれたのだそうです。

社会実験を経てわかったこと

オモケンパークの個性は「街中×グランドレベル×マイパブリック」だと面木さんは仰います。街並みの中に突如現れる豊かな空間。通りと敷地の間に段差はなく、境界が曖昧になっています。そして面白いのは、開放されていながらも「私有地」であること。そのため、公的な場に課されるルールさえ超えて、フラットにできる可能性を持っているのです。

 

オモケンパークを作る前に、面木さんは広場となったオモキビル跡地を使って、様々な社会実験を行いました。中でも有名なのは、「0円ハウス」の活動で知られている坂口恭平さんと企画された「モバイルハウス計画in上通り」。
(参考:熊本地震をきっかけに、まちを見直す。ビル解体後の建てない場づくり「オモケンパークプロジェクト」 | 住まいの「本当」と「今」を伝える情報サイト【LIFULL HOME’S PRESS】

 

モバイルハウスとは、車輪がついた、土地に定着しない家。これをオモキビル跡地に二つ作り、緑を植え、民営の公園として街に解放。モバイルハウスには地元のハンバーガーショップが入りました。坂口さんと解剖学者の養老孟司さんのトークイベントをここで開催すると、更に注目が集まるようになり、「ここをイベントで使わせて欲しい」という依頼も来るようになったそうです。

 

このような社会実験の末に、建物を建てなくてもワクワクする「場」は作れるということを、面木さんは確信されたそうです。

上通りの縁側「オモケンパーク」

そしていよいよ、オモケンパークプロジェクトが本格始動。建てる上での条件は、テナントビルを建てるよりも、ダウンサイジング且つコストダウンすること。地元の材料を使うこと。熊本の自然を感じられること。テナント貸しはせず、自分たちで運営すること。熊本のシンボルである「地下水」を汲み上げる井戸を中心とした、売り手・買い手ではなく「市民」として活用できる場所であることでした。

 

建築ボリュームが少ないため、大手のゼネコンなどへの依頼は断られてしまったそうですが、設計の矢橋先生をはじめとした、ご友人やお知り合いの協力により、ついにオモケンパークが完成。製材用に不向きな材料を合わせて作られた「CLTパネル」を使用した建物は、上通りに面した入り口から少し敷地側に寄せて作られ、街との段差をゼロに。建物内を通り抜けた先に、現代的な手押しポンプで汲み上げられる井戸を復活させ、阿蘇の木で出来たベンチを置き、公園のような空間に。都市空間である上通りから延長した、「上通りの縁側」のような空間が実現しました。

 

建物についてはこちらのメディアでもご紹介しています。合わせて是非ご覧下さい。

萌える建築/オモケンパーク/Logic Zine

Less is more

上通りを「ソーシャルグッドな街」にしたいという面木さん。街の在り方・使われ方をデザインしていく「ソーシャルデザインパーク」として、オモケンパークをクリエイティブな人たちに活用してもらいたいそうです。

 

また、この広場ができるきっかけとなったのが熊本地震であることもあり、2015年9月に国連総会で採択された、持続可能な未来を作るための17項目「SDGs」の達成に貢献したいということも仰っておられました。

 

そして、オモケンパークのこれからについて、面木さんが語られたのは「拡大・成長」ではなく「縮充・成熟」ということ。階段を下りるようなオモケンパークのロゴマークは、このことを表しているそうです。

 

建物のボリュームとしては、オモキビルの6分の1となったオモケンパーク 。減少したことによって空間が広がり、豊かさが生みだされました。これは、世界三大建築家のうちのひとりである、ミース・ファン・デル・ローエが提唱した「Less is more」という考え方そのもの。少なくすることで、豊かになる。オモケンパークが目指すこの世界観は、人口減少の時代を生きる私たち全員が学ぶべきものであると思います。

Work In Life

オモケンパークプロジェクトを始動した後、面木さんはある新聞記事を見つけて驚いたそうです。なんとその記事には、面木さんのお父様の言葉が記されており、街中に緑を増やすこと、空き地を活用した、市民の憩いの場を作ることが提案されていたとのこと。

 

自分の目指すものを、お父様も考えておられた。お父様の考えられていたことを引き継ぎながらも、自分らしさをプラスして、今がある。この新聞記事を読み、ご両親やご先祖様がやってこられたことを尊敬し、自分のやれることを自分なりのスタイルで取り組もうと、改めて思われたそうです。

 

“Work Life Balance”という言葉がありますが、面木さんにとっては“Work in Life”。つまり、仕事と人生のバランスを取っているのではなく、生き方の中に働き方がある。最後にこの言葉を語って頂き、一同拍手の中、面木さんはご講演を終えられました。熊本の上通りから、日本の将来や世界の未来までが変わっていくような、ワクワクするご講演でした。

 

面木さん、ありがとうございました!

 

次回C.school第9回 出演者は・・・

●椿原ばっきーさん / PRディレクター、熊本クラフトコーラ 発起人
●田村祐一さん / 銭湯の革命家

 

こちらも面白い回になりそうです。
9/24(火)19:00から、予定を空けておいて下さいね!

 

 

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ご予約お待ちしております。

 

面木 健/オモケンパーク オーナー、ディレクター
昭和40年上通生まれの上通育ち。
趣味はフライフィッシングをはじめアウトドア全般、フォトグラフィーほか多数。6月8日にオープンした「OMOKEN PARK」ディレクター。「KMバイオロジクス株式会社」広報も担当。
オモケンパーク HP: https://omoken-park.jp
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